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生命保険

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生前贈与に保険を利用した時の仕組みって?メリット・デメリット、注意点について解説

生前贈与とは?

生前贈与とは、生きているうちに財産を他の人に無償で譲り渡すことをいいます。自身が望む相手に財産を譲り渡すことができ、相続財産を効果的に減らせるため、相続税対策としてもよく利用されます。

生命保険の契約形態による節税効果の違い

相続税対策には様々な方法がありますが、生命保険を利用した対策もそのひとつです。生命保険は契約者(保険料負担者)、被保険者(保障の対象者)、保険金受取人の関係によって死亡保険金にかかる税金の種類が変わります。節税効果にも違いが生じるため、目的にあった形で契約することが重要です。

契約形態別・死亡保険金にかかる税金の違い
契約者
(保険料負担者)
被保険者保険金受取人死亡保険金にかかる税金の種類
ケース1相続税
ケース2贈与税
ケース3所得税
ケース4相続税
(2割加算)
ケース5所得税

死亡保険金に相続税がかかる場合(ケース1・ケース4)

ケース1やケース4のように契約者(保険料負担者)と被保険者が同じ契約では、支払われる死亡保険金に相続税がかかります。

法定相続人が保険金受取人となる場合(ケース1)

ケース1のように法定相続人である子が保険金受取人となる場合、死亡保険金の非課税枠を利用でき、非課税限度額までは死亡保険金に相続税がかかりません。その分の相続税負担が軽減されます。

死亡保険金の非課税枠

500万円×法定相続人の数

例えば法定相続人が配偶者と子2人であれば、最大1,500万円(=500万円×3人)まで死亡保険金には相続税がかかりません。複数の法定相続人が死亡保険金を受け取る場合は、それぞれが受け取る死亡保険金の割合に応じて、非課税枠が按分されます。

<配偶者3,000万円、子2人が各1,000万円の保険金を受け取った場合>
  • 配偶者の非課税枠=1,500万円×(3,000万円/5,000万円)=900万円
  • 子の非課税枠=1,500万円×(1,000万円/5,000万円)=300万円

法定相続人以外が保険金受取人となる場合(ケース4)

ケース4のように法定相続人でない孫などが保険金受取人となる場合、死亡保険金の非課税枠は使えません。さらに相続税額の2割加算の対象となり、相続税額は通常の計算方法で計算した税額の1.2倍となり、税負担は増えてしまいます。

Photo by www.nta.go.jp

孫を受取人とするメリットは、孫に直接財産を引き継げる点、子から孫への相続を飛ばし、相続税の納税を1回減らせる点にあります。2割加算で増える負担よりも相続を1代飛ばして減る負担が大きければ、最終的な相続税負担も軽減されます。子から孫への相続でも多額の相続税発生が見込まれるケースで有効な対策です。

死亡保険金に贈与税がかかる場合(ケース2)

ケース2のように契約者(保険料負担者)と被保険者、保険金受取人がすべて異なる契約では、支払われる死亡保険金に贈与税がかかります。

贈与税は、受け取った保険金から贈与税の基礎控除額(年間最大110万円)を差し引いた金額に税率をかけて計算されます。贈与税は税負担が重くなる傾向があり、このような契約形態は避けるのが賢明です。

被保険者である母が亡くなる前に、契約者(保険料負担者)である父が亡くなってしまうとどうなるのでしょうか。この場合、新たに契約者となる人が「生命保険契約に関する権利」を相続することになり、その評価額に対して相続税がかかります。生命保険契約に関する権利は、相続開始時(契約者の死亡時)に解約した場合に支払われる解約返戻金の額で評価されます。解約返戻金がなければ相続税はかかりません。

死亡保険金に所得税がかかる場合(ケース3・ケース5)

ケース3やケース5のように契約者(保険料負担者)と保険金受取人が同じ契約では、死亡保険金に所得税がかかります。

死亡保険金を一時金で受け取る場合には、受け取った保険金額の総額から支払った保険料の総額と特別控除額(最大50万円)を差し引いた金額の2分の1が「一時所得」となります。所得税額は、保険金受取人がその年に得た他の所得(給与所得など)と一時所得を合せた金額に税率をかけて計算します。

死亡保険金を一時金で受け取った場合の一時所得金額

(受け取った死亡保険金額−支払った保険料の総額−特別控除額)×1/2

一時所得の金額は実際に受け取る死亡保険金に比べて小さくなるため、所得税の対象となる契約は、相続税や贈与税の対象となる契約に比べ、税負担が少なくなりやすい形態です。ただし、所得税率は所得が多い人ほど高くなるため、保険金受取人が高所得者の場合は注意が必要です。

生前贈与に保険を利用する仕組み

生前贈与に保険を利用する場合、死亡保険金が所得税の対象となるよう、親(または祖父母)を被保険者、子(または孫)を契約者兼保険金受取人として保険に加入します。

親(または祖父母)は、契約者となる子(または孫)に現金を生前贈与し、子(または孫)は受け取った現金から保険料を支払います。贈与税には年間110万円の基礎控除枠があるため、110万円までは無税で贈与できます。

非課税枠は、受贈者(贈与を受ける人)1人につき年間110万円まで利用できます。3人に贈与すれば年間330万円、10年間続ければ3,300万円を無税で贈与でき、相続財産が減った分だけ相続税も軽減されます。

保険を利用した生前贈与では終身保険の利用が一般的

保険には様々な種類がありますが、生前贈与には保障の一生涯続く「終身保険」が一般的に用いられます。

そのほか、子や孫が契約者(保険料負担者)兼被保険者となる医療保険などに加入し、親や祖父母から生前贈与された現金で保険料を支払う形で、子や孫自身の「保障」を残す方法もあります。

生前贈与に保険を利用するメリット

相続税対策となるほか、次のようなメリットが期待できます。

メリット1 税負担を軽減でき手元により多くのお金を残せる

生前贈与により相続財産が減れば、相続税の負担が軽減されます。

下表は総資産1億円の人が、相続人となる子3人にそれぞれ毎年100万円ずつ生前贈与を行い、10回目の贈与後に亡くなった場合と、生前贈与せず亡くなった場合でそれぞれ相続税額を計算したものです。

生前贈与の有無による相続税額の違い(上記のケース)
生前贈与しなかった場合生前贈与した場合
総資産額1億円1億円
生前贈与額3,000万円
死亡前3年以内の相続人への贈与分の相続財産への加算額900万円
相続財産の総額1億円7,900万円
基礎控除額4,800万円4,800万円
課税対象額5,200万円3,100万円
相続税総額630万円315万円

このケースでは、生前贈与によって相続税が半分に抑えられ、金額にして315万円安くなります。

相続税の軽減効果は、保険に加入しなくても生前贈与によって相続財産を減らすことで得ることができます。保険に加入する金銭的なメリットとしては、一般的に死亡保険金は払い込む保険料総額を上回ることです。現金のまま受け取るよりも、保険金として受け取ったほうが手元により多くのお金が残る点が大きいといえます。

メリット2 生前贈与したお金を無駄遣いされにくくなる

生前贈与に保険を組み合わせることで、贈与者である親や祖父母が亡くなるまで、贈与したお金を使えない状態にできるメリットがあります。

生前贈与によって相続財産は減らしたい反面、子や孫が多額の現金を手にして浪費に走ってしまったり、仕事に対するモチベーションを下げてしまうようなことは避けたい。そのような想いを実現するには有効な方法といえます。

メリット3 死亡保険金は保険金受取人が確実に受け取れる

死亡保険金は(民法上の)相続財産ではなく、保険金受取人の固有財産です。そのため、遺産分割協議や遺留分侵害額請求の対象にはならず、保険金受取人が全額を確実に受け取れることがメリットといえます。

相続税が高額になるケースでは、保険料を生前贈与し、死亡保険金が所得税の対象となる形で加入すると税負担を抑えられます。

どのような契約形態とするかは、相続財産の状況や、贈与者と受贈者の関係、想定される相続税率と保険金受取人の所得税率、加入する保険の死亡保険金額などをもとに比較し、判断する必要があります。

メリット4 孫へ生前贈与すれば相続の回数を減らせる

孫へ財産を引き継ぐには、本来親から子、子から孫という2回の相続が発生します。しかし生前贈与を行なった場合、親から孫へ直接財産を引き継げるメリットがあります。

子(孫の親)の相続においても相続税対策が必要となるケースでは、1代飛ばしの相続は有効といえるでしょう。

孫に直接財産を引き継ぐには、生前贈与のほか、孫に財産を相続させることを記した遺言書を作成したり、孫を保険金受取人として自身が契約者(保険料負担者)となる保険に加入する方法もあります。

しかしこれらの方法では、孫が相続(または遺贈)によって財産を受け取るため、相続税の2割加算の対象となって相続税の負担が増えてしまうおそれがあります。また、相続や遺贈によって財産を取得した孫が、相続開始前3年以内に生前贈与などで財産を受け取っていると、贈与を受けた財産も相続財産となり、相続税の対象となります。

被保険者である祖父母が直接保険料を支払い、孫が保険金を受け取る保険に加入する方法では、孫が受け取る死亡保険金は税法上の「みなし相続財産」として扱われるため、相続によって財産を受け取ったとみなされ、相続税の2割加算などの対象になります。

これに対し、孫が保険料負担者(契約者)となる契約形態であれば、受け取った死亡保険金はみなし相続財産になりません(所得税の対象)。ほかに相続や遺贈によって取得した財産がなければ、相続開始前3年以内に生前贈与を受けた財産は相続財産として扱われず、相続税の対象になりません。当然相続税の2割加算もありません。

生前贈与に保険を利用するデメリット

保険を利用した生前贈与では、次のようなデメリット(リスク)も想定されます。想定されるリスクについては、対処法を押さえておきましょう。

デメリット1 生前贈与者(被保険者)から贈与を受けられなくなるリスク

保険を利用した生前贈与は、生前贈与と保険料の払い込みを長期にわたって継続することを前提に行われるため、途中で生前贈与者(被保険者)である親や祖父母から贈与を受けられなくなるリスクがあります。

例えば、生前贈与者が認知症となり贈与が行えなくなってしまう、親子が対立し贈与を打ち切られてしまう、贈与できる現金資産がなくなってしまうなどのケースが想定されます。

保険料が支払えず保険を途中で解約すると、払い戻される解約返戻金は、通常払い込んだ保険料を下回ります。この場合、保険を解約せずに保険料の払い込みを中止し、その時点の解約返戻金に応じた保険金額の保険に変更する「払い済み保険」という制度があります。

払い済み保険に変更すると、保険金額は下がりますが、解約して解約返戻金を受け取るよりも、死亡保険金として受け取るほうが、一般的に受取額は多くなります。

デメリット2 契約者である受贈者の判断で解約できてしまう

親が生前贈与により間接的に保険料を負担している契約であっても、契約者は受贈者である子であり、子の意思で自由に解約できてしまいます。

生前贈与した財産は自分が亡くなるまで使わないでほしいという想いで保険に加入しても、贈与した財産をどう使うかは、原則贈与を受けた人の判断に委ねられます。

デメリット3 相続開始前3年以内の相続人への生前贈与は相続財産に加算される

生前贈与を受けた人が相続や遺贈で財産を取得した場合、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産は相続財産になるため、生前贈与の効果が薄れてしまいます。

相続がいつ発生するかは正確に予測できないため、生前贈与による相続対策を行うのであれば、なるべく早く始め、少しでも長く贈与を行うのがポイントです。

生前贈与の相手に制限はないため、孫やひ孫、子や孫の配偶者など、対象を広げれば、短期間により多くの生前贈与ができます。相続や遺贈で財産を取得しない人に対する生前贈与は相続財産にならないため、これらの人への生前贈与も相続税対策として効果的です。

デメリット4 相続開始まで贈与したお金は使えない

生前贈与した財産を保険料の支払いに充てると、解約しない限り相続開始まで使えなくなります。必要なタイミングでお金を使えないとなれば、相続開始前に子や孫に財産を譲り渡せる生前贈与のメリットは損なわれます。

保険に加入する場合も、保険料に充てる部分は一部に留め、残りの使い道は受贈者の判断に任せてもよいでしょう。

教育資金や結婚・子育て資金、住宅取得資金など、用途を限定して生前贈与する場合、年間110万円の基礎控除とは別枠で、一定額まで非課税で贈与できる制度も用意されています。

生前贈与に保険を利用する際の注意点

保険を利用した生前贈与は、税務署に否認されないよう、次のような点に注意して行う必要があります。契約者が受贈者(子や孫)の契約であっても、実質的に生前贈与者(親や祖父母)が保険料を払っていたと判断されると、死亡保険金が相続税の対象となってしまいます。

注意点1 毎年贈与契約書を作成する

贈与を行なった証拠として贈与契約書を作成しましょう。このとき、たとえ100万円を10年間贈与する予定だったとしても、契約書に「毎年100万円を10年間贈与する」と書いてはいけません。このような贈与は「定期贈与」にあたり、最初の年に1,000万円の贈与があったとみなして贈与税が課税されてしまうからです。

定期贈与とみなされないために、契約書は毎年作成しましょう。後からまとめて作成したと疑われないためには、公証役場で確定日付を付与してもらえば確実です。

未成年に対する贈与では、親権者を法定代理人として記載した贈与契約書を作成し、法定代理人が贈与契約に同意している旨を明記しておきます。

注意点2 贈与は記録が残る方法で行う

現金の贈与は、贈与者の口座から受贈者の口座に振り込みで行い、贈与があった記録が残るようにします。

注意点3 贈与者(被保険者)は生命保険料控除を受けない

契約者(保険料負担者)と保険金受取人が子、被保険者が親という契約で、親が実際に保険料を支払った場合は、親が年末調整や確定申告でその保険料に対する生命保険料控除を受けても構いません。

しかし、親が生命保険料控除を受ければ、税務署から保険料を負担しているのは親であると判断されてしまいます。つまり保険料負担者と被保険者が親の契約となり、死亡保険金は所得税の対象にならなくなってしまうのです。

あくまで生前贈与を受けた子が、自身のお金で保険料を支払うのであり、生命保険料控除を受けるのであれば、必ず契約者である子自身が控除を受けましょう。

まとめ

保険を活用した生前贈与は、税負担の軽減や相続トラブルの回避に有効な対策です。メリット・デメリットを理解した上で、選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

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