日経平均株価の基本と計算方法。投資を始める際にはここから押さえよう
日経平均株価とは
日経平均株価は「日経平均」や「日経225(Nikkei 225)」とも呼ばれ、日本を代表する株価指数として世界中で利用されています。
現在は、東京証券取引所第一部に上場する銘柄から選ばれた225銘柄の株価をもとに、日本経済新聞社が算出し、公表しています。
算出開始は1950年9月7日。当時は東京証券取引所が算出し、「東証修正平均株価」として公表されていました。その後1970年に東京証券取引所が東証株価指数(TOPIX)の算出を開始したのに伴い、日経グループが算出を引き継ぎ、現在に至っています。
指数値は、戦後に東京証券取引所が再開された1949年5月16日まで遡って計算されています。
日経平均株価の構成銘柄
指数を構成する225銘柄は、東証第一部上場銘柄のうち、流動性の高い銘柄を中心に、セクター(業種)のバランスを考慮して選ばれ、市場動向や産業構造の変化などを反映して定期的に見直されています。
2022年4月以降は「東証プライム市場上場銘柄」を対象に変更される
東京証券取引所では市場区分の変更が決まっています。これに伴って、2022年4月以降は構成銘柄の選定対象が、現在の「東証第一部上場銘柄」から「東証プライム市場上場銘柄」に変更されます。
なぜ225銘柄なのか
当初指数の算出を開始するにあたり、指標性を保つために売買高の多い銘柄を全業種からバランスよく選んだところ225銘柄になったとされています。東証第一部の上場銘柄数や産業構造などは変化していますが、日経225(Nikkei 225)という通称で世界中で広く利用されている実態を尊重し、「225」の銘柄数が継承されています。
構成銘柄の見直し
日経平均株価の構成銘柄の入れ替えは、年1回定期的に実施される「定期見直し」と、上場廃止などによって構成銘柄が欠けた場合に補充する「臨時入れ替え」のいずれかの方法で行われます。
かつては除外すべき銘柄が生じた都度、銘柄を補充するルールでしたが、1991年10月以降は定期的に見直しが行われています。2000年4月には、積極的に流動性の高い銘柄を採用したり、セクターのバランスに配慮するというルールが新たに組み入れられ、現在に至っています。
「定期見直し」による構成銘柄の入れ替え
毎年10月初め(原則第1営業日)には、構成銘柄の市場代表性の維持を目的として、定期的な見直しが行われています。産業構造の変化を指数に織り込むため、「セクター間の銘柄数バランス」を考慮しながら、「市場流動性」の高い銘柄を採用し、低い銘柄を除外する方法が用いられます。入れ替え銘柄数には。これまで制限はありませんでしたが、2021年10月の定期見直しからは、3銘柄が上限になります。
定期見直しの流れ
- 市場流動性の計測
- 流動性の高い銘柄の採用と低い銘柄の除外
- セクターバランスによる採用・除外
(1)市場流動性の計測
市場流動性は、5年間の計測期間の「売買代金」と「売買高あたりの価格変動率」をもとにし計測されます。
(2)流動性の高い銘柄の採用と低い銘柄の除外
東証第一部上場銘柄のうち、上記で計算した市場流動性の上位450銘柄を「高流動性銘柄群」とします。構成銘柄のうち、高流動性銘柄群に含まれなくなった銘柄があれば除外し、高流動性銘柄群のうち上位75銘柄に含まれる未採用の銘柄が新たに採用されます。
(3)セクターバランスによる採用・除外
日経平均株価のセクター分類は、日経業種分類の36業種を「技術」「金融」「消費」「素材」「資本財・その他」「運輸・公共」の6セクターに集約したものです。このセクター間で構成銘柄数のバランスがとれるように除外と採用が行われます。
日経平均株価のセクター分類
セクター分類 | 日経業種分類 | 採用銘柄数 | セクター別ウェート |
技術 | 医薬品、電気機器、自動車、精密機器、通信 | 58銘柄 | 48.54% |
金融 | 銀行、その他金融、証券、保険 | 21銘柄 | 1.99% |
消費 | 水産、食品、小売業、サービス | 33銘柄 | 23.36% |
素材 | 鉱業、繊維、パルプ・紙、化学、石油、ゴム、窯業、鉄鋼、非鉄金属、商社 | 58銘柄 | 13.62% |
資本財・その他 | 建設、機械、造船、輸送機器、その他製造、不動産 | 35銘柄 | 10.39% |
運輸・公共 | 鉄道・バス、陸運、海運、空運、倉庫、電力、ガス | 20銘柄 | 2.09% |
*出所:日経平均プロフィル(採用銘柄数・セクター別ウェートは2021年9月10日現在)
セクターバランスによる採用・除外の方法
- 高流動性銘柄群に含まれる各セクターの銘柄数の2分の1を、そのセクターの妥当銘柄数とする
- 妥当銘柄数と実際の採用銘柄数を比較し、採用銘柄数が妥当数より多いセクターからは除外、少ないセクターには新たに採用する
「臨時入れ替え」による入れ替え
次のような事由によって、東証第一部上場銘柄でなくなった銘柄は構成銘柄から除外されます。
除外対象事由
- 整理銘柄への指定
- 被合併、株式移転、株式交換など企業再編に伴う上場廃止
- 第2部への指定替え
除外銘柄が発生した場合には、原則として「高流動性銘柄」に含まれる銘柄の中から、除外される銘柄と同じセクターに属する銘柄のうち、最も市場流動性の高い未採用銘柄が新たに採用されます。
構成銘柄の入れ替えによる株価への影響
構成銘柄の見直しに先立って、事前に採用銘柄と除外銘柄が公表されます。採用銘柄は、日経平均株価に連動するインデックスファンドなどへの組み入れに伴う買いや、その思惑から株価は上昇しやすくなります。一方で除外銘柄の株価は下落しやすくなります。
日経平均株価はどうやって算出されている?
日経平均株価は、225銘柄の株価を合計して、225で割った単純な平均値ではありません。
さまざまな調整により、構成銘柄の入れ替えや株式分割・併合による株価の変動があっても、指数の連続性が保たれる工夫が施されています。この工夫によって指数の連続性が保たれ、株価の動きを長期的に比較・評価できるようになっているのです。このように計算される修正平均株価を、「ダウ式平均株価」といいます。
実際に日経平均株価がどうやって算出されているのか。計算方法を詳しくみていきましょう。
日経平均の計算方法
日経平均株価は、構成銘柄の株価を「みなし額面」換算した上で合計し、「除数」で割って算出されます。
日経平均株価の計算方法
- 各構成銘柄の採用株価=株価×(50円/みなし額面(円))
- 日経平均株価=構成銘柄の採用株価の合計/除数
なにやら「みなし額面」や「除数」という聞き慣れない用語がでてきました。
額面制度の名残「みなし額面」とは
2001年の商法が改正されるまで、多くの株式には最初に株券を発行した際の金額が記載されていました。この金額が「額面」です。額面には「20円額面」「50円額面」「500円額面」「5万円額面」と、額面の記載のない「無額面」をあわせた5種類があります。
額面制度が廃止されるまでは、取引所で株式を売買する際の売買単位(最低株数)を原則額面5万円とするルールがあり、額面によって売買単位が決まっていました。額面50円であれば1,000株単位、額面5万円であれば1株単位といった具合です。
額面50円の銘柄と額面5万円の銘柄では、通常株価の水準は大きく違います。額面の異なる銘柄の株価をそのまま使って平均を計算すると、額面の大きな銘柄を採用するだけで指数に影響してしまうのです。
そこで、日経平均株価を計算する際の株価には、額面50円に換算した金額を使っていました。例えば、額面5万円の銘柄の株価が20万円であれば、指数の算出に使う株価は20万円×(50円/額面5万円)=200円となります。
額面制度はすでに廃止されていますが、現在の株価も当時の額面の影響が残っています。日経平均株価を算出する際には、今でも株価水準を調整するため、それぞれの銘柄に額面があるとみなし、旧額面50円に換算した株価が使われています。
みなし額面による換算(計算例)
- 採用株価(額面50円での換算株価)=株価×(50円/みなし額面(円))
- ファーストリテイリング(9983):株価7万4,940円×(50円/みなし額面50円)=7万4,940円
- ソフトバンクグループ(9984):株価7,179円×(50円/みなし額面25/3円)=4万3,074円
*株価は2021年9月10日終値
2021年10月からは「みなし額面」に代わり「株価換算係数」が導入される
額面制度の廃止後も「みなし」という形で日経平均株価の計算に残っていた額面ですが、2021年10月以降はその名前が消えることになります。代わって導入されるの「「株価換算係数」です。
すでに日経平均株価の構成銘柄に採用されている銘柄については、みなし額面を基に株価換算係数は設定されるため、影響はありません。
既存銘柄の株価換算係数=50円÷(2021年9月30日時点のみなし額面)
株価換算係数とみなし額面(例)
銘柄名(コード) | 株価換算係数 | みなし額面 |
みずほフィナンシャルグループ(8411) | 0.1(=50円÷500円) | 500円 |
ファーストリテイリング(9983) | 1(=50円÷50円) | 50円 |
ソフトバンクグループ(9984) | 6(=50円÷(25/3円)) | 25/3円 |
2021年10月以降、新たに構成銘柄として採用される銘柄の株価換算係数は、原則「1」に設定されます。ただし、基準日時点(7月末)で株価が日経平均株価構成銘柄の採用株価合計の1%を超える銘柄については、0.1〜0.9(0.1刻み)の間で、その銘柄の採用株価が構成銘柄の採用株価合計の1%を超えない最大の値が設定されます。
株価換算係数=日経平均株価構成銘柄の採用株価合計×1%÷新規採用銘柄の株価 (株価は基準日時点、値は小数点第2位以下切り捨て)
これまでは、株価水準の高い、いわゆる「値がさ株」は、採用に伴う指数への影響が大きいため、構成銘柄に採用されにくい傾向がありました。今後の新規採用については、株価換算係数により、構成比が1%を超えないように調整されるため、値がさ株も採用されやすくなります。
実際に2021年10月の定期入れ替えでは、日本を代表する銘柄でありながら未採用であった「キーエンス(6861)」「村田製作所(6981)」「任天堂(7974)」の3銘柄が新規採用されました。
いずれも株価水準の高さがネックでしたが、キーエンスと任天堂には0.1、村田製作所には0.8の株価換算係数が設定され、指数への影響を抑えられたことで、採用に至ったものと考えられます。
2021年10月1日時点の日経平均構成銘柄株価換算係数一覧(予定)
株価の見た目上の変化は「除数」で調整される
日経平均株価は、採用株価の合計を「除数」という値で割って計算されます。
除数は株式分割や株式併合、銘柄入れ替えなど、市況変動によらない株価の変動を調整し、指数の連続性を保つためのものです。
除数による調整の具体例
例えばA銘柄(株価900円)、B銘柄(株価1,500円)、C銘柄(株価1,800円)の3銘柄で構成される指数があった場合、除数を銘柄数である3として計算した平均株価は、(900円+1,500円+1,800円)÷3=1,500円です。
ここでC銘柄に1株を3株にする株式分割があったとしましょう。理論上、C銘柄の株価は3分の1の600円になります。除数を3のままで平均株価を計算すると、(900円+1,500円+600円)÷3=1,000円となり、株式分割によって平均株価は500円も下落してしまいます。
この場合。株式分割後の除数を2に変更すれば、平均株価は(900円+1,500円+600円)÷2=1,500円となり、分割による影響を取り除くことができます。
日経平均株価の除数
日経平均株価の除数は、算出開始時には銘柄数と同じ「225」でした。その後、変更が重ねられ、2021年9月10日時点の値は「27.769」となっています。最新の日経平均除数は、「日経平均プロフィル」で確認できます。
市況変動によらない株価変動の調整は、除数ではなく、みなし額面を調整して行われる場合もあります。この場合、除数の変更は行われません。
日経平均株価を投資に活用する際の注意点
日経平均株価は、日本経済や株式市場の動向・方向性を把握するための重要な指標です。しかし、絶対的なものではありません。
注意点(1)値がさ株の影響を受けやすい
日経平均株価は株価の平均値であるため、その値はどうしても株価の高い「値がさ株」の動きに大きく影響されます。
日経平均株価ウェート上位5銘柄(2021年9月10日現在)
銘柄名(コード) | セクター | ウェート |
ファーストリテイリング(9983) | 消費 | 8.99% |
東京エレクトロン(8035) | 技術 | 6.47% |
ソフトバンクグループ(9984) | 技術 | 5.11% |
ダイキン工業(6367) | 資本財・その他 | 3.46% |
ファナック(6954) | 技術 | 3.12% |
ユニクロを運営する「ファーストリテイリング(9983)」は、1銘柄で日経平均株価全体の約9%のウェートを占めています。また上位5銘柄のウェートは約27%、上位10銘柄では約40%と、ウェートは一部の銘柄に大きく偏っています。ほとんどの構成銘柄の株価が下落していても、ウェートの高い一部の銘柄の株価が上昇していれば、日経平均株価はプラスになるケースも少なくありません。
日経平均株価は、一部の限られた銘柄の値動きが強く反映される指標です。実体経済や株式市場の動向が、必ずしも正確に反映されているわけではないことを理解して利用しましょう。
注意点(2)業種の偏りがある
セクター間のバランスも考慮されているとはいえ、上場銘柄の中から一部を選ぶという仕組み上、構成銘柄の業種にはどうしても偏りが生じてしまいます。
2021年9月時点の業種別銘柄数では、電気機器(28銘柄)、化学(17銘柄)、機械(15銘柄)などの比率が高くなっています。日経平均株価には、これら比率の高い業種の値動きがより強く反映され、比率の低い業種の値動きは反映されにくい傾向があります。
また、輸出関連銘柄の比率が高いことから、日経平均株価は円安には強く、円高には弱いといわれています。
注意点(3)個別株の値動きとは異なる
日経平均株価は、主要銘柄の値動きから日本の株式市場全体の動向や方向性(トレンド)を把握するのに役立つ指標です。日経平均株価の動向は個別株の株価にも影響し、日経平均株価が上昇していれば、個別株の株価も上がりやすくなります。
しかし、実際の株価は、そのほかにもさまざまな要因が絡み合って決まります。個別株へ投資するのであれば、日経平均株価はあくまで判断材料のひとつとして、それぞれの銘柄について情報を収集し、分析した上で投資することが大切です。
まとめ
日経平均株価は、多くの投資家が注目し、日本経済、株式市場の動向や方向性を把握するのに役立つ指標です。ただし、一部の銘柄や業種の値動きに影響を受けやすい特徴があります。この点には注意し、うまく活用していきましょう。
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