ふるさと納税する前に知りたいメリット・デメリット!手続きの方法や注意点も解説!
ふるさと納税ってどんな制度?
そもそも「ふるさと納税」とはどのような制度なのか。まずはその成り立ちと制度の仕組みについて確認しておきましょう。
ふるさと納税の成り立ち
地方で生まれ、医療や教育など様々な行政サービスを受けて育った人も、多くは都会に出て働き、そこで納税を行なっています。その結果、都会の自治体は税収を得る一方、生まれ育った「ふるさと」の自治体は税収を得られません。
今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか
引用元 | ふるさと納税研究会報告書
そこで誕生したのが、自分の意思で納税先の自治体(都道府県、市区町村)を選べる「ふるさと納税」制度です。
好きな自治体に納税(寄附)できる制度
生まれた場所、育った場所、ゆかりの場所など、「ふるさと」の定義は人それぞれ異なります。納税先の条件として厳密に証明することは難しいため、納税者本人の意思を尊重し、納税者が選択した自治体が「ふるさと」として認められています。
自分の生まれ育った自治体に限らず、自分が応援したい自治体であれば、自由に納税(寄附)できる制度となっています。
「納税」という名前がついていますが、実際には自治体への「寄附」にあたります。
各自治体のホームページでは、集まった寄附金の使い道を公開しており、多くの自治体では納税者本人が使い道を指定できるのも特徴です。
寄附したお金は税金から控除される
ふるさと納税による寄附額は、所得税と住民税からそれぞれ控除されます。
所得税からの控除
所得税からの控除額は、以下のように計算されます。
所得税からの控除額=(ふるさと納税額−2,000円)× 納税者の所得税率
控除対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。
後述する「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用する場合、所得税からの控除は行われず、すべて住民税から控除されます。所得税からの控除分に相当する金額も住民税から控除されるため、控除額自体は変わりません。
住民税からの控除(基本分)
住民税からの控除の基本分は、次のように計算されます。
住民税からの控除額(基本分)=(ふるさと納税額−2,000円)×10%
控除対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
住民税からの控除(特例分)
住民税からの控除の特例分は、次のように計算されます。
住民税からの控除額(特例分)=(ふるさと納税額−2,000円)×(100%−10%(基本分)−所得税の税率)
上記で計算した控除額が住民税所得割額の2割を超える場合、「住民税所得割額×20%」が特例分の控除額になります。
ふるさと納税をするともらえる返礼品が魅力
自治体から「返礼品」として送られる地域の特産品も、ふるさと納税の大きな魅力です。
ふるさと納税の5つメリット
ふるさと納税には、次のようなメリットがあります。
ふるさと納税のメリット(1)魅力的な返礼品がもらえる
納税先の自治体から「返礼品」としてもらえる地域の特産品は、ふるさと納税の大きな魅力です。
その内容は、「肉」「魚介類」「米」「フルーツ」「野菜」といった食品から、「宿泊券」「日用品」「家電製品」「工芸品」まで多岐にわたり、選ぶ楽しさもあります。
ふるさと納税サイトには返礼品の検索機能があり、自分が欲しいものからふるさと納税先を探すこともできます。
2,000円の自己負担は必要ですが、それ以上に価値のある返礼品をもらえるケースが多く、お得な制度といえます。
ふるさと納税のメリット(2)寄附金は税金から控除される
ふるさと納税による寄附金は、自己負担額2,000円を差し引いた金額が寄附金控除の対象となり、所得税や住民税から控除されます。
全額控除となる寄附額には上限がありますが、その金額内であれば、実質2,000円の負担で返礼品などのメリットが得られます。
ふるさと納税のメリット(3)納税(寄附)先を自由に選べる
ふるさと納税を行う自治体は、生まれ育った場所だけでなく、ゆかりのある街、応援したい自治体など、納税者が自由に選べます。
ふるさと納税する自治体数に制限はなく、複数の自治体へ寄附できます。
ただし、ふるさと納税先が6団体以上になると、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」(後述)が利用できなくなる点には注意が必要です。
ふるさと納税のメリット(4)寄附金の使い道を選べる
納税者が寄附金の使い道を指定できるのもメリットといえます。
使い道としては、子どもへの支援や福祉の充実、地域活性化、環境保護など、各自治体が力を入れて取り組んでいる事業が中心となっています。
各自治体では、ホームページなどでふるさと納税による寄附金の使い道を公表しています。返礼品の内容とあわせ、ふるさと納税先を選ぶポイントになります。
【寄付金の使い道(北海道函館市の例)】
- 函館市全体のために
- 子どもたちの未来のために
- 美しい景観を守るために
- 活気と賑わいのあるまちのために
- 福祉の充実のために
- 大間原子力発電所の建設凍結のために
ふるさと納税のメリット(5)サイト経由の申し込みでポイントやギフト券がもらえる
ふるさと納税サイトを経由してふるさと納税を申し込むと、返礼品に加え、サイトによっては各種ポイントやAmazonギフト券などがもらえます。
支払いにクレジットカードを使えば、クレジットカードのポイントも貯まり、さらにお得です。
ふるさと納税5つのデメリット
メリットの多いふるさと納税制度ですが、次のようなデメリットもあります。
ふるさと納税のデメリット(1)節税対策にはならない
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体への寄附額から自己負担額を差し引いた金額が、元々納める所得税や住民税から控除される制度です。国や住んでいる自治体に支払うか、寄附先の自治体に支払うかの違いであり、支払う金額は減りません。
自己負担額の2,000円は控除されないので、むしろ支払う金額は増えます。
ふるさと納税のデメリット(2)税額の少ない人は恩恵を受けにくい
専業主婦/主夫や学生など、支払う所得税や住民税がない人は、ふるさと納税をしても控除によるメリットを受けられません。
納める税額の少ない人も、控除限度額が低く、メリットは小さくなります。
収入が多い人でも、住宅ローン控除や医療費控除などを受けると税額が減り、控除限度額が下がるため要注意です。
ふるさと納税のデメリット(3)控除限度額が分かりにくい
ふるさと納税の控除限度額は一律ではなく、納税者が本来納める税額によって決まります。
税額は収入のほか、家族構成や他の控除の有無によって変動するため、ふるさと納税をする時点では確定しません。控除限度額がいくらなのか、いくらふるさと納税をすればいいのか分かりにくい点はデメリットといえるでしょう。
ふるさと納税の控除限度額(年間上限額)の目安
参考として、他の控除を受けていないサラリーマンや公務員(給与所得者)について、実質負担額が2,000円となる控除限度額の目安を示したのが次の表です。ふるさと納税の控除限度額(年間上限額)の目安
納税者本人の給与収入 | 独身/共働き | 夫婦 | 夫婦+子(高校生)1人 |
300万円 | 2万8,000円 | 1万9,000円 | 1万1,000円 |
400万円 | 4万2,000円 | 3万3,000円 | 2万5,000円 |
500万円 | 6万1,000円 | 4万9,000円 | 4万0,000円 |
600万円 | 7万7,000円 | 6万9,000円 | 6万0,000円 |
700万円 | 10万8,000円 | 8万6,000円 | 7万8,000円 |
800万円 | 12万9,000円 | 12万0,000円 | 11万0,000円 |
900万円 | 15万1,000円 | 14万1,000円 | 13万2,000円 |
1,000万円 | 17万6,000円 | 16万6,000円 | 15万7,000円 |
1,200万円 | 24万2,000円 | 23万9,000円 | 22万9,000円 |
1,500万円 | 38万9,000円 | 38万9,000円 | 37万7,000円 |
2,000万円 | 56万4,000円 | 56万4,000円 | 55万2,000円 |
2,500万円 | 84万9,000円 | 84万9,000円 | 83万5,000円 |
自己負担額2,000円を除き全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安
表中「共働き」は、配偶者が配偶者(特別)控除の適用を受けていない場合、「夫婦」は配偶者に収入がないケース、「高校生」は16〜18歳の扶養親族を指します。
中学生以下の子どもは控除額に影響しないため、計算で考慮する必要はありません。例えば、共働きで小学生と中学生の子どもがいる場合は、「独身/共働き」欄と同額です。
上記はあくまで目安であり、住宅ローン控除や医療費控除など、他の控除を受けている場合や、自営業者、年金生活者の場合、控除限度額は異なります。
ふるさと納税のデメリット(4)控除でお金が戻るまでにタイムラグがある
ふるさと納税による控除(還付)は、ふるさと納税をした年の所得税と、その翌年の住民税から行われます。
控除により所得税が還付されるのは翌年の確定申告をしてから1〜2ヶ月後。住民税は翌年の6月以降に支払う住民税が減額されます。ワンストップ特例利用時は、すべて住民税から控除されるため所得税の還付はありません。
最終的な自己負担額は2,000円となる場合でも、ふるさと納税を行なった段階では一旦「先払い」の形になります。支払いからお金が戻ってくるまでにタイムラグが生じる点はデメリットといえるでしょう。
ふるさと納税のデメリット(5)手続きに手間がかかる
ふるさと納税による控除を受けるには、原則確定申告を行う必要があり、手続きに手間がかかります。
確定申告をしなくても控除を受けられる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用すれば、手続きが楽になります。ただし、利用には一定の条件(後述)があります。
特例が利用できず確定申告が必要な場合も、方法さえ知っていればそれほど難しくありません。次章以降で手続きの流れを確認しておきましょう。
ふるさと納税するには?手続きの流れを確認
ふるさと納税するにはどうすればいいのか。具体的な手続きの流れを確認していきましょう。
STEP(1)ふるさと納税額の上限(控除限度額)を確認
いくらまでふるさと納税できるのか。まずは自分の控除限度額を確認しましょう。
控除限度額を確認するには、民間の「ふるさと納税サイト」や、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で提供されている試算ツールの利用がおすすめです。
STEP(2)ふるさと納税先を決める
自分の控除限度額を把握できたら、どの自治体にふるさと納税するかを決めます。
応援したい自治体のほか、欲しい返礼品から自治体を探してもよいでしょう。ふるさと納税サイトには、便利な検索機能が用意されています。
STEP(3)ふるさと納税(寄附)を申し込む
ふるさと納税先と寄附金の使い道、返礼品が決まったら、ふるさと納税を申し込みます。
申し込みは、「ふるさと納税サイト」経由で行うのが一般的です。
複数のサイトから同じ自治体にふるさと納税できる場合、利用するサイトによって、付与されるポイントなどが違うことがあります。利用するサイトも比較して、よりお得なサイトから申し込みましょう。
申込方法には、ふるさと納税先の自治体へ郵送などで直接「寄附申出書」を提出する方法があります。手間もかかり、特にメリットはないため、ふるさと納税サイトが利用できる自治体であれば、サイトから申し込むほうがよいでしょう。
自治体に直接申し込み、専用の振込用紙や自治体が発行する納付書(納入通知書)でふるさと納税を行なったときは、払込票の控えが確定申告に必要になる場合があります。大切に保管しておきましょう。
STEP(4)返礼品と寄附金受領証明書を受け取る
ふるさと納税を申し込むと、返礼品と寄附金受領証明書が届きます。
送付される時期は、それぞれの自治体や返礼品の内容によって異なるため、申し込みの際に確認しておくと安心です。
寄附金受領証明書は、自治体によって返戻品に同封されるケースもあれば、別便で届くケース、確定申告前までに1年分がまとめて届くケースがあります。
寄附金受領証明書は、税金の控除を受けるために必要なので、大切に保管しておきましょう。
STEP(5)控除手続き
寄附金控除を受けるには、「確定申告」または「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の手続きが必要です。
確定申告を行う場合
確定申告により控除を受ける場合は、ふるさと納税をした翌年3月15日までに住所地の税務署に確定申告書を提出します。確定申告書には「寄附金受領証明書」の添付が必要です。
ふるさと納税の確定申告に必要な書類
- 寄附金受領証明書
- マイナンバーカード(または通知カード)
- 通帳またはキャッシュカード(所得税の還付先口座が確認できるもの)
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
確定申告書の作成は、国税庁サイト「確定申告書等作成コーナー」を利用すると便利です。寄附金受領証明書や源泉徴収票を手元に用意し、サイト画面の指示に従って金額等を入力していくと税額等が自動計算され、簡単に確定申告書を作成できます。
ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用する場合
次の適用条件を満たす場合、ふるさと納税先の各自治体に「特例申請書」と確認書類を提出すれば、確定申告をしなくても控除を受けられます。
【ふるさと納税ワンストップ特例制度の適用条件】
- ふるさと納税以外で確定申告が不要な給与所得者等
- ふるさと納税先の各自治体へ特例適用に関する申請書を提出
- ふるさと納税先が5団体以内
【ふるさと納税ワンストップ特例制度の申請に必要な書類】
- 特例申請書(寄付金税額控除に係る申告特例申請書)
- マイナンバーカードのコピー(または通知カードのコピー)
- 申請者の本人確認書類(マイナンバーカードがあれば不要)
特例申請書は、ふるさと納税を行う際に特例利用の申出をすれば、ふるさと納税先の自治体から寄附金受領証明書と一緒に送られてきます。特例利用の申出は、ふるさと納税の申し込みフォームから可能です。
特例利用の申出を忘れた場合や紛失した場合は、総務省ホームページ「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」からもダウンロードできます。
確認書類は、マイナンバーと申請者の本人確認のための書類です。マイナンバーカードのコピーを提出する場合は、両方を確認できるため、別途本人確認書類を用意する必要はありません。
特例申請書と確認書類は、ふるさと納税した翌年の1月10日までにふるさと納税先の自治体(または指定事業者)に到着するよう郵送します。この期限を過ぎるとワンストップ特例は利用できなくなってしまいます。余裕を持って発送しましょう。
ふるさと納税の注意点
ふるさと納税を行う際は、次のような点にも注意しましょう。
ふるさと納税の注意点(1)控除対象は申請者本人のみ
ふるさと納税による寄附金は、申請者(寄附の名義人)本人の税額からのみ控除できます。
例えば妻がふるさと納税をして、妻名義の寄附金受領証明書を受け取った場合、その寄附金は夫の税額から控除できないので要注意です。
特にクレジットカードで支払う場合は、クレジットカードが申請者本人名義のものかよく確認しましょう。
ふるさと納税の注意点(2)他の控除と併用する際は控除限度額に注意
ふるさと納税の控除限度額は、他の控除の有無や金額によって変わります。
以下のようなケースでは、収入が変わっていなくても控除限度額が大きく変わる可能性があるため、特に注意が必要です。
【ふるさと納税の控除限度額への影響が大きい変化の例】
- 家族構成が変化した(配偶者控除・扶養控除など)
- 住宅を購入した(住宅ローン控除)
- 高額な医療費を支払った(医療費控除)
- 災害で損害を受けた(雑損控除)
ふるさと納税の注意点(3)確定申告をする場合はすべての自治体について申告が必要
ワンストップ特例の申請書を提出している場合でも、その年分の確定申告をすると申請はすべて無効になります。この場合、控除を受けるすべてのふるさと納税分について、確定申告が必要です。
ワンストップ特例を利用するつもりが、6団体以上にふるさと納税をして適用を受けられなくなった。他の控除を受けるため、あるいは副業で収入を得て確定申告が必要になった。このようなケースでは、申告漏れのないよう注意しましょう。
ふるさと納税の注意点(4)現在住んでいる市区町村へのふるさと納税
現在住んでいる「市区町村」へのふるさと納税は、制度上可能です。
ただし、返礼品はもらえません。また、ふるさと納税額からは自己負担額の2,000円が差し引かれます。
税金の使い道の指定が目的でなければ、通常通りに納税すべきでしょう。
現在住んでいる「都道府県」に対するふるさと納税であれば、返礼品ももらえ、通常通りのメリットが期待できます。
まとめ
ふるさと納税は、ほとんどリスクはなく、多くの人にとってメリットのある制度です。ただし、税制優遇がメインの制度であり、元々支払う税額の違いによって、人それぞれメリットの大きさは変わってきます。
自分にとってメリットが最大になるふるさと納税額(控除限度額)はいくらなのか。デメリットや注意点もよく理解して、制度をうまく活用しましょう。
控除限度額の計算や申し込みには、ふるさと納税サイトや試算ツールの利用が便利です。
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