資金源や経済効果は?FP目線で考えるオリンピックとお金の関係性!
オリンピックの資金源は?
多額の予算が必要とされるオリンピックには、さまざまな資金源があります。オリンピックの主な資金源は以下の5つです。
オリンピックの主な資金源5つ
- テレビ放映権料
- 企業の協賛金
- 観戦チケットや記念硬貨の売上金
- ライセンス収入
- その他公費
1.テレビ放映権料
オリンピックの資金源一つ目は、テレビ放映権料です。テレビ各局は放映権料を払うことで、自局でオリンピックの様子を放送することができます。
オリンピックやワールドカップなど、世界的なスポーツイベントでは多額の放映権料が動きます。日本ではオリンピックなどの世界的なスポーツイベントの場合、NHKと民間放送各社の共同設立機構「ジャパンコンソーシアム」が互いに資金を負担しています。
オリンピックは種目によって視聴率に差が出やすく、テレビ局にとってはどの種目を放送するかが大切です。そのため、オリンピック前にテレビ各局で抽選をおこない、どの種目をどのテレビ局が放送するか公平に決めています。
2.企業の協賛金
続いての資金源が、企業の協賛金です。企業がオリンピックへスポンサー料金を支払うと、オリンピックの呼称使用権などさまざまな権利が得られます。オリンピックのスポンサーは大きく4種類あります。
オリンピックのスポンサー4種類
- ワールドワイドオリンピックパートナー
- オリンピックゴールドパートナー
- オリンピックオフィシャルパートナー
- オリンピックオフィシャルサポーター
ワールドワイドオリンピックパートナーはIOCと直接契約しており、もっともランクの高いスポンサーです。協賛金の額は破格ですが、オリンピックの公式スポンサーとして企業にとってのマーケティング価値は高いと考えられます。
3.観戦チケットや記念硬貨の売上金
オリンピックの観戦チケットや記念硬貨の売上金も、オリンピックの資金源の一つです。
観戦チケットは、オリンピック開催の1年ほど前から販売されます。観戦チケットは競技種目や席種によって金額が変わります。東京オリンピックの開会式のA席は、300,000円という高額チケットでした。
また、オリンピックの記念硬貨は造幣局から販売されます。素材に金や銀などが使用される記念硬貨もあり、デザインや種類が非常に豊富です。記念硬貨の販売価格は数千円~数万円になります。
4.ライセンス収入
オリンピックの公式キャラクターやエンブレムを用いたグッズを販売するための、ライセンス収入も資金源となります。オリンピック開催でよく販売されるのは、以下のようなオリジナルグッズです。
オリンピックのオリジナルグッズ
- Tシャツ
- 帽子・キャップ
- マグカップ
- タオル
- マスコットフィギュア など
なお東京オリンピックでは、公式グッズのライセンス収入目標額は124億円でした。
5.その他公費
国や地方公共団体から支出される公費も、オリンピックの資金源です。東京オリンピックでは無観客の開催となり、観戦チケットの販売で見込んでいた収入に穴があきました。そのため、公費でまかなった部分も増えたとされています。
オリンピックの経済効果ってどれくらい?
オリンピックの経済効果として、ここでは3つのポイントをお伝えします。
オリンピックの経済効果のポイント
- オリンピック開催5~2年前にかけてGDP成長率(経済成長率)が高まる
- オリンピック開催が決定すると外国人観光客が増える傾向
- オリンピック開催前はAV機器業界が盛り上がる
日本銀行調査統計局のデータをもとに、それぞれの経済効果について見ていきましょう。参照:2020 年東京オリンピックの経済効果(日本銀行調査統計局)
オリンピック開催5~2年前にかけてGDP成長率(経済成長率)が高まる
オリンピックが開催される5年前から2年前にかけて、GDP成長率(経済成長率)は高まる傾向にあります。1950~2009年にかけて各国のデータを調査し、GDP成長率を表したのが以下のグラフです。
GDP成長率が高まる要因としては、オリンピック関連施設の建設投資への盛り上がりや、インバウンド需要が増加するためと考えられます。
オリンピック開催が決定すると外国人観光客が増える傾向
オリンピックの開催が決定した国は注目度が上がり、外国人観光客が増えやすくなります。過去のオリンピック開催国の外国人観光客数を表したのが、以下のグラフです。
各国における開催決定年までの10年間のトレンドと、オリンピック開催が決定してからのグラフでは動向が変わっています。オリンピックの開催決定年から開催年までは、どの国もおおむね右肩上がりで外国人観光客数が増加しています。
オリンピック開催前はAV機器業界が盛り上がる
オリンピック開催に向け、高画質テレビの販売や8K放送の普及など、AV機器業界は盛り上がりを見せます。
オリンピック視聴者の中には、より鮮明な映像でスポーツの臨場感を得たい人も少なくありません。そのため、最新の映像技術やAV機器への設備投資が盛んになります。
夏季と冬期でオリンピックの予算に差はある?
夏季と冬季ではオリンピック予算に差はあるのでしょうか。イギリスのオックスフォード大学で調査したデータによると、冬季オリンピックに比べ、夏季オリンピックは平均的に予算が高いことが分かりました。
同大学では1960~2016年のすべての夏季・冬季オリンピックを対象に、実質費用を調査しました。調査結果は以下の通りとなり、夏季と冬季では実質費用に21億ドル(約2,300億円)もの差があります。
夏季・冬季オリンピックの実質費用比較
- 夏季の平均費用は52億ドル(約5,700億円)
- 冬季の平均費用は31億ドル(約3,400億円)
なお、2014年冬に開催されたソチオリンピックは、他の冬季オリンピックと比べ実質費用が飛びぬけています。ソチオリンピックが冬季オリンピックの平均費用を引き上げていることがうかがえます。
オリンピックが中止になったら資金補償はされるの?保険は適用?
東京オリンピックは結果的に1年延期の末開催しましたが、開催ギリギリまで延期または中止が議論されていたことは記憶に新しいのではないでしょうか。ここでは仮にオリンピックが中止になった際の、資金補償や保険について解説します。
東京オリンピックが仮に中止だった場合の経済的損失
2021年5月に野村総合研究所がまとめた結果では、東京オリンピックが中止した場合1兆8,108億円の経済的損失が出ると試算しました。
オリンピックが中止されるとインバウンド需要の減少や、オリンピック関連グッズの売上鈍化などさまざまな影響があり得ます。そのため、失われる経済効果も非常に大きいです。
それでは、オリンピックほど多額のお金が動くイベントでの資金補償はあるのでしょうか。
イベント中止を対象とした「興行中止保険」という保険がある
スポーツ大会やイベントが中止されたときの補償として、「興行中止保険」といった保険があります。東京オリンピックの組織委員会は、東京海上日動火災保険の興行中止保険に加入しており、保険金の補償分支払いについて一時期協議がおこなわれていました。
興行中止保険では、イベントが中止した際は経費の90%を補償されるのが一般的とされています。ただし、オリンピックにおいては従来の保険内容と異なる可能性は十分考えられるでしょう。
オリンピック終了で経済にどんな影響がある?
オリンピックは開催前や開催年の経済効果が注目されがちですが、閉幕後の影響も見逃せません。ここでは、オリンピックの終了後に開催国や開催都市でどのような影響がでるのか、過去の事例も参考にしながら見ていきましょう。
オリンピックが残した影響を「オリンピック・レガシー」と呼ぶ
オリンピックの終了が開催国や開催都市に与える影響を、「オリンピック・レガシー(五輪の遺産)」と呼びます。例えば、オリンピックの競技会場や選手村をあらたな施設として再活用し、街の活性化に繋げるのもレガシーの一つです。
オリンピック・レガシーは、基本的にポジティブな意味で使われます。しかし、すべてのオリンピック・レガシーが良い影響とは言えず、開催都市によって差が生じているのも事実です。
【ポジティブな事例①】2012年ロンドンオリンピック
オリンピック・レガシーの中でもポジティブな過去事例として話題によく挙がるのは、2012年ロンドンオリンピックです。ロンドンオリンピックのレガシーを以下にまとめます。
ロンドンオリンピックのレガシー
- 貿易・投資利益において4年間で定めた目標値を1年2ヶ月で達成
- 2011年12月~2016年までに350万人以上が来英し、21億ポンドの追加消費
- オリンピックパークへ年間約100万人以上が来訪
- 障がい者スポーツ人口が約22万人増加
【ネガティブな事例②】2004年アテネオリンピック
ポジティブなオリンピック・レガシーの一方で、ネガティブな影響に繋がる場合もあります。2004年アテネオリンピックがその代表例で、当時会場として使用された競技場の一部は廃墟化しています。
廃墟化した競技場に人の姿はほとんどなく、壁には落書きがされ放置されている状態です。負の遺産を作り出さないためには、オリンピック終了後の政策も重要だと認識させられます。
まとめ
本記事ではオリンピックとお金の関係性についてお伝えしました。あらためて記事の内容を以下にまとめます。
記事のまとめ
- テレビの放映権料やライセンス収入など、オリンピックの資金源はさまざま
- オリンピック開催によりGDP成長率やインバウンド需要が高まる傾向である
- 夏季と冬季で実質費用に差があり、夏季オリンピックの方が費用は高め
- オリンピック中止による損失は大きく、資金補償としては「興行中止保険」がある
- オリンピック終了後に残る影響をオリンピック・レガシーと呼ぶ
オリンピックの開催予定は、すでに2028年夏季のロサンゼルスオリンピックまで決定しています。東京オリンピック終了後の経済効果はまだ様子見の段階ですが、今後ポジティブなオリンピック・レガシーが起こることを期待しましょう。
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