地震保険の必要性とは?意外に知らないケース別の補償内容や選び方を詳しく解説
地震保険とは
地震保険の概要
地震保険は、地震や噴火などによる家屋や家財の損害を補償する損害保険の1種です。1966年制定の「地震保険に関する法律」により、地震保険が誕生しました。主な特徴は次の通りです。
地震保険の主な特徴
- 原因となる災害は地震や噴火、地震・噴火で発生した津波に限定される
- 火災保険とセットでしか加入できない
- 保険金額は火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内 など
地震保険と火災保険の違い
地震保険の補償内容は火災保険とは異なります。火災保険で補償されない地震などによる損害を地震保険で補償するというイメージです。 地震保険を理解するために、先に火災保険について説明します。
火災保険の補償内容
火災保険は、火事だけでなく様々な自然災害による損害を補償する損害保険です。火災保険の対象となる主な自然災害などは次の通りです。(火災保険の対象となる自然災害など)
補償の対象となる自然災害
自然災害 | 例 |
火災 | 火事で家や家財が焼失した |
落雷 | 落雷による高電圧で家電製品が壊れた |
破裂・爆発 | ガス漏れによる爆発によって家が破損した |
風災 | 台風によって屋根が飛ばされた |
雪災・雹災 | 豪雪によって家屋が倒壊した |
水濡れ | 水道管からの水漏れによって床が水浸しになった |
水災 | 豪雨による洪水で床上浸水した |
盗難 | 泥棒に家財が盗まれた |
火事や自然災害以外にも、盗難や水漏れなど補償範囲が広いのが火災保険の特徴です。また、補償の対象となるのは「建物」と「家財」の2種類で、どちらか一方を単独で加入する方法と同時に加入する方法があります。
火災保険で補償されない損害
火災保険に加入していても、次のケースでは損害の補償はありません。
損害補償のないケース
- 故意や重大な過失、法令違反による損害(自宅への放火など)
- 戦争や革命、内乱などによる建物や家財への損害
- 核燃料物質やその汚染物の放射性、爆発性などによる事故
- 地震や噴火、地震・噴火で発生した津波による損害
火災保険では補償されない「地震や噴火、地震・噴火で発生した津波による損害」を補償するのが地震保険です。
地震保険の必要性
火災保険の補償対象は広範囲ですが、地震保険の補償は特定の災害に限定されます。それでも地震保険に加入する必要はあるのでしょうか。
地震保険に加入しないリスク
地震保険に加入していない場合、次のケースでは火災保険から保険金は支払われません。
火災保険から保険金が支払われないケース
- 地震によって家が倒壊した
- 地震による火災によって家が焼失した
- 地震による津波で家が流された
上記ケース以外でも、地震などによって家財に大きな損害を受けるケースもあります。数百万円から数千万円の損害も想定されますが、地震保険に加入していないと損害が全く補償されないという大きなリスクを抱えます。
地震保険の加入状況と支払状況
それでは、実際にどれだけの人が地震保険に加入しているのでしょう。地震保険の加入状況と支払状況を紹介します。
地震保険の加入率は65.2%
損害保険算出機構「2019年度(2018年度統計)火災保険・地震保険の概要」によると、2018年度末現在で地震保険の契約件数は1,901万件、付帯率(※)は65.2%です。(※火災保険に地震保険をセットしている割合)
阪神・淡路大地震や東日本大地震以降、契約件数、付帯率とも大幅に上昇しています。損害保険算出機構「2019年度(2018年度統計)火災保険・地震保険の概要」
東日本大震災では81.7万件の支払
地震保険が誕生してから最も保険金支払が多かったのが東日本大震災で、支払件数は81.7万件、保険金額は1兆2,833万円にものぼります。保険金支払いが多かった順に並べると、1位は「東日本大震災」、2位は「熊本地震」、4位は「阪神・淡路大震災」です。阪神・淡路大震災での支払が少ない理由は、当時の地震保険付帯率は10%台で、地震保険が普及していなかったためです。
損害保険算出機構「2019年度(2018年度統計)火災保険・地震保険の概要」
東日本大震災と熊本地震だけで支払件数が100万件以上、地震保険に未加入だったものを含めると相当件数の損害が発生したことになります。地震大国と言われる日本では、地震保険は必要性の高い保険だといえます。
地震保険の商品内容と料金
地震保険には、どのような商品があるのでしょうか。また、その料金(地震保険料)はどれくらいなのでしょうか。それぞれについて解説します。
地震保険の商品内容は全保険会社共通
地震保険に加入する時は、保険会社選びは不要です。地震保険の商品内容は国内の全ての保険会社共通だからです。
地震保険は国と民間保険会社が共同運営
地震保険制度は「地震保険に関する法律」に基づき、国と民間の保険会社が共同で運営(※)しています。また、補償の内容も「地震保険に関する法律」で定められているので、どの保険会社で地震保険に加入しても商品内容(補償や保険料)は全く同じです。
(※)民間の保険会社が引き受けた保険契約を、政府が再保険しています。そのため、地震保険の加入時に決める必要があるのは保険金額だけです。また、地震保険の保険金額は火災保険の30%から50%の範囲内で決めます。
地震保険は火災保険とセットで加入
地震保険に加入する時、火災保険とセットでないと加入できないので覚えておきましょう。火災保険は不要だけど地震保険のみ加入したい、と思っても単独ではできません。火災保険に加入済みで地震保険は未加入の人も、火災保険の契約期間中に地震保険に加入することが可能です。
また、火災保険に加入していることを前提に、別の保険会社で地震保険に加入できます。
地震保険の補償内容
地震保険は、「地震や噴火、地震・噴火で発生した津波」による建物や家財の損害に対して保険金が支払われます。 次のケースなどです。
地震保険によって保険金が支払われるケース
- 地震によって家が倒壊した
- 地震による火災によって家や家財が焼失した
- 地震による津波で家や家財が流された
支払われる保険金は、損害の程度と加入時に決めた地震保険の保険金額(火災保険の30%から50%)で決まります。ただし、家財は1,000万円、建物は5,000万円が限度です。
地震保険の保険金額
損害の程度 | 保険金額 |
全損 | 地震保険金額の100% |
大半損 | 地震保険金額の60% |
小反損 | 地震保険金額の30% |
一部損 | 地震保険金額の5% |
損害保険算出機構「2019年度(2018年度統計)火災保険・地震保険の概要」
地震保険で補償されない損害
地震保険では、前述の建物や家財の損害以外は補償されません。建物や家財に対する保険金以外にも、 「臨時費用保険金」「失火見舞費用保険金」などが支払われる火災保険とは補償内容が異なるのです。
例えば、東日本大震災で度々報道される「被災地で何年も仮住まいのケース」で、建物や家財に対する保険金が1度支払われたとします。すると、その後の仮住まい費用などは一切補償されません。また、家を再建するまでの生活費などについても同様です。
地震保険の保険料
地震保険ではどの保険会社も保険料は同じですが、次の3つによって保険料が決まります。
保険料の決定要件
- 建物の所在地
- 建物の構造
- 建物の耐震性能
損害保険算出機構「2019年度(2018年度統計)火災保険・地震保険の概要」
保険料は建物所在地によって大きく異なる
地震発生リスクや被害の程度は地域によって違うため、地震保険料は建物の所在地(都道府県)によって異なります。地震保険料は、都道府県によって11に区分され保険料の高い地域と安い地域では、保険料が3倍以上違います。
マンション構造の建物・保険金額1,000万円・1年間の地震保険料
- 東京都・神奈川県・千葉県・静岡県:保険料27,500円
- 岩手県・広島県・福岡県など20県 :保険料7,400円
保険料は建物の構造によって異なる
また、地震の被害は建物の構造によって異なるため、地震保険料もそれに合わせて設定されます。構造は「イ構造(主に鉄骨・コンクリート造の建物)」と「ロ構造(主に木造の建物)」に分類され、より大きな被害が予想されるロ構造の建物のほうが保険料は高くなります。
東京都の建物・保険金額1,000万円・1年間の地震保険料
- イ構造:保険料27,500円
- ロ構造:保険料42,200円
建物の耐震性能が高いと保険料は安い
地震保険の基本的な保険料は建物の所在地と構造で決まりますが、所定の耐震性能を備えた建物については次の割引があります。
耐震性能による割引
- 免震建築物割引(免震建築物に該当):50%
- 耐震等級割引(耐震等級1・2・3級):等級により50%・30%・10%
- 耐震診断割引(耐震診断等で現行耐震基準を達成):10%
- 建築年割引(1981年6月1日以降に新築):10%
地震保険の選び方(おすすめのプラン)
最後に、地震保険をどうやって選ぶかについて説明します。火災保険に加入している保険会社で、次の2点を選択して内容を決定しましょう。
「建物」と「家財」の選択
火災保険に加入していることを前提に、「建物と家財の両方」「建物のみ」「家財のみ」のいずれかを選択します。一般的に建物の補償を優先して、余裕があれば家財も選択しましょう。家財は不要と考えがちですが、新しく買い替える場合は意外と費用がかかります。
各保険会社は、年齢別や世帯構成別の「家財新価の目安」を紹介しています。保険会社によって多少異なりますが、独身世帯の目安は300万円前後、30代後半以降の子どもあり世帯では1,000万以上が一般的です。
保険金額は火災保険金額の50%がおすすめ
補償の対象が決まったら、次は地震保険の保険金額の選択です。保険金額は火災保険金額の30%から50%の範囲内で決めますが、50%の付保をおすすめします。
地震で建物が全損して満額の保険金額が出ても、建物の建替費用の最大半額にしかなりません。建替費用は高額なので、少しでも自己負担を減らすために付保可能な50%で加入しましょう。
まとめ
地震保険は、火災保険で補償されない「地震や噴火、地震・噴火で発生した津波による損害」を補償するものです。大地震が頻発していること、被災時の損害は数千万円になる可能性があることから、地震保険の必要性は高いと言えます。
地域によって保険料は大きく異なりますが、保険料が高い地域ほど地震リスクは高いと認識しましょう。また、現在の科学では地震に対する正確な予測はできないため、保険料の安い地域の人も絶対安全とはいえません。日本国内で暮らすなら地震保険の検討をおすすめします。
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